富士山の背景画

背景画屋さんが絵を描きに来てくれる時に、私はいつも男湯か女湯のどちらかに富士山の絵を描いてくれることを密かに期待していました。

でも、富士山が描かれたのは1度だけです。その時完成した絵は、別の風景画でした。

後で思えば、背景画屋さんが来た時に、私から「富士山の絵をお願いします」と頼んで見ればよかったかもしれないです。その頃職人さんには、自分から声をかけてはいけない風を感じておりました。

ある日のこと。
テレビの人気番組の関係者から、「番組で使うための調査ですが」という電話がありました。
質問は「富士山の背景画はありますか。それは男湯ですか、女湯ですか」というものでした。ちょうどうちの店にも背景画に富士山が描かれておりましたので、「はいあります。男湯です」と答えました。それから10日ほど経ったそのテレビ番組で、「お風呂屋さんに聞きました。富士山の絵は男湯に描かれている方が多い。」と紹介されてました。
今思うと、なぜなんでしょうか。

その他に今までに、男湯と女湯の真ん中に、富士山の頂がある絵も見たことがあります。男湯と女湯をまたぐように一つ大きく描かれているということです。その富士はとても大きくて、大変立派で、どちらからも見えて清々しかったのを覚えております。

関東近郊の銭湯をやること約半世紀。全部で4軒のお店を渡り歩いて来ましたが、最後は20年間腰を据えて、町の変わりゆくのを番台から眺めておりました。 ブログは主に女将が担当しております。子供は3人。