夕飯のメニューは◯◯

お店の間取りによりますが、私達が営業した銭湯のうち、自宅の台所と、男湯の中庭が隣合っている銭湯がありました。

お客さんが庭の縁側で涼んでいると、どうやら自宅の台所の物音が聞こえてくる時があるらしいのです。

例えば、大きな物音や、子供達のケンカ声などが聞こえてくると。

そんな音を聞いたお客さんの中には、帰り際にカウンターにいる主人に、「子供さん元気がいいねー!」と報告してくれる人もいます。お店にいても、住まいの方の情報をキャッチすることが出来て、良かったかな?

私がカウンターにいる時は、どちらかというと、お店に来たお客さんが、「今旦那さんが自販機でタバコ買ってたよ」とか、「郵便局の辺りを自転車で通り過ぎたよ」とか、主人の情報を教えてくれます。

「他の人より顔を知られているから、うっかり散歩も出来ない」なんて言っています。

ところで、お店の縁側で涼んでいるお客さん。

夕方になって、私が食事の準備を始めると、台所から聞こえる音と匂いで、本日のメニューを予想するようです。

ある日、「今日は野菜炒めだよ」と言って帰って行ったので、主人はそのつもりで住まいの台所へ行くと、なんと夕飯はカレーでした。

「あれ?今日は野菜炒めだと聞いてたぞ?!」って。

関東近郊の銭湯をやること約半世紀。全部で4軒のお店を渡り歩いて来ましたが、最後は20年間腰を据えて、町の変わりゆくのを番台から眺めておりました。 ブログは主に女将が担当しております。子供は3人。