帰りの「ごちそうさま」

毎年春になると、引っ越して行く人、引っ越して来る人で、銭湯に来るお客さんも少しずつ入れ替わって行きます。

うちの店の場合、引っ越して来て初めての入浴でも、特別な挨拶はありません。ほとんどそうだとは思いますが。

でも、引っ越して行く時には、全員ではありませんが、「引っ越します」と声を掛けてくれます。

「もう顔を見れないのか」と淋しさもありますが、「声を掛けてくれてありがとう」という気持ちが後々にも残り、いい思い出になります。

新顔のお客さんの中に、若い女の人がいました。その人はお店に入って来て、私が「いらっしゃいませー」と声を掛けると、お金を払い、ペコっとおじきをして、「いただきます」と言って入ります。

帰りは私が「ありがとうございました」と声を掛けると、ペコっとおじきをして、「ごちそうさま」と言って帰ります。

「いただきます。ごちそうさま」という挨拶は、なんだか良い感じがするなあと思っておりました。

しかし、1〜2ヶ月もするかしないかで、「いただきます。ごちそうさま」は「おやすみなさい」に変わってしまいました。少しさみしかったですが、生活に少しずつ慣れてきたという事だったのでしょうね。

(あまり最近聞かないかも知れませんが、風呂屋などから夜遅くに帰る時には、「おやすみなさい」と挨拶しておりました。今となっては、この挨拶も懐かしいかもしれません。)

関東近郊の銭湯をやること約半世紀。全部で4軒のお店を渡り歩いて来ましたが、最後は20年間腰を据えて、町の変わりゆくのを番台から眺めておりました。 ブログは主に女将が担当しております。子供は3人。