私が風呂屋に嫁いだ頃、その当時の我が銭湯の機械類は、ほとんど手動式で、動かすにはある種の技術が必要でした。
ある日、主人が朝から出かけており、「帰宅が予定より遅れるから、お湯を沸かしておいて」という電話がありました。
釜の焚き付け口には主人が出掛ける前に、薪と新聞紙をうまく満杯に入れてあり、マッチで火をつければいいところまで、スタンバイしてありました。
まず、「下風呂」と呼ばれるお湯を沸かす大きな釜と、煙突との境にある鉄の扉を引き上げて、空気の通り口を開けます。
そして、釜の焚き口の扉を開けて、火を点けます。
その際、その下の火力調整の為の「ダンパー」と呼ばれる鉄の扉を全開にします。
みるみるうちに、火の勢いが強まり。ゴーッと音がします。そして大量のお湯が沸いていきます。
最初、釜の温度は60℃くらいあるのですが、それは上の部分。下の部分は30℃程だそうです。(俗には、金魚が泳げるくらい、と言っていたそうです。)
途中、1回薪を追加して、およそ1時間かけてお湯を沸かしていました。