お湯を沸かす

私が風呂屋に嫁いだ頃、その当時の我が銭湯の機械類は、ほとんど手動式で、動かすにはある種の技術が必要でした。

ある日、主人が朝から出かけており、「帰宅が予定より遅れるから、お湯を沸かしておいて」という電話がありました。

釜の焚き付け口には主人が出掛ける前に、薪と新聞紙をうまく満杯に入れてあり、マッチで火をつければいいところまで、スタンバイしてありました。

まず、「下風呂」と呼ばれるお湯を沸かす大きな釜と、煙突との境にある鉄の扉を引き上げて、空気の通り口を開けます。

そして、釜の焚き口の扉を開けて、火を点けます。

その際、その下の火力調整の為の「ダンパー」と呼ばれる鉄の扉を全開にします。

みるみるうちに、火の勢いが強まり。ゴーッと音がします。そして大量のお湯が沸いていきます。

最初、釜の温度は60℃くらいあるのですが、それは上の部分。下の部分は30℃程だそうです。(俗には、金魚が泳げるくらい、と言っていたそうです。)

途中、1回薪を追加して、およそ1時間かけてお湯を沸かしていました。

関東近郊の銭湯をやること約半世紀。全部で4軒のお店を渡り歩いて来ましたが、最後は20年間腰を据えて、町の変わりゆくのを番台から眺めておりました。 ブログは主に女将が担当しております。子供は3人。