ちょっとした事件簿 その3

ある、のどかな日の夕方。
開店間もなく入浴した方々が、入浴を終えて、脱衣場でおしゃべりしながら身仕度しているようです。奥様たち4〜5人かな。

そのうちに、その中のAさんが、自分の下駄箱の鍵がないことに気が付いたようです。

それから、その場にいた人達があちこち探しましたが、見つかりません。

そして「下駄箱の鍵が見えなくなっちゃったそうですよー。」と、私が呼ばれました。私は脱衣場に行って、一緒に探しましたが、見あたりません。

仕方なく、『鍵がなくなった下駄箱の中の物と、履いて来たという物が合っていれば履物を渡す』という当店のルールに従って、スペアキーを使って下駄箱から出しました。その後皆さんお帰りになりました。

その中で一番よく探していた奥様Bさんも「どこ行っちゃったのかしらねえ!不思議だわー。」と言いながら帰って行きました。

翌日の夕方、そのBさんが私に、「なぜか私のリュックに入っていたの・・・」と少し悲しそうな顔で言いながら、下駄箱の鍵を私にくれました。

正直な奥さんです。入口の下駄箱に鍵をつけて知らん顔していれば、『いつの間にか鍵が付いてる』くらいにしか思わないのに。奥様の性格が少しわかった事件でした。何かの拍子にリュックに入っちゃったんですよ!とにかく、鍵があって良かったですよ。

関東近郊の銭湯をやること約半世紀。全部で4軒のお店を渡り歩いて来ましたが、最後は20年間腰を据えて、町の変わりゆくのを番台から眺めておりました。 ブログは主に女将が担当しております。子供は3人。