ある時、私たち家族は銭湯を借りて、営業することになりました。
業界では「預り」と呼ばれています。持ち主が営業しないで、他の人が営業するのです。
借りている方が家賃を払う場合と、給料制とあります。
主人と私と、保育園の年少組に入園したばかりの娘の、3人は知らないお風呂屋へ引っ越して行きました。銭湯は持ち主である、大家さんの家の敷地内にありました。
銭湯の引っ越しは、休業日の1日で行われます。
家具などの荷物の出し入れはもちろんのこと、昨日まで仕事をしていた人から、仕事の引き継ぎもこの1日の中で行われます。
どうやら、後日改めて聞くというようなことはないようです。しかし、この引き継ぎに半日以上かかります。
それが完了してから、荷物の搬入になります。次の日からは、この店が通常通り営業できるようにしなくてはなりません。
(連休の無い時代でしたので、全て1日で完了する必要がありました。今でいうと、ブラック企業的な作業量ですが、時代がそうでしたね)
とにかく主人は、どんな店か、どのような所なのか見に来ていましたが、私も娘も引っ越しのトラックの助手席に乗って、突如連れて来られたという記憶です。
昨日までのお店とは違うお店で、何がどんな風になるのだろうか。そんなことを思う余裕さえなく、慌ただしい1日が過ぎていき、翌朝にはお風呂屋の開店のための、準備が始まったのでした。