お店の間取りによりますが、私達が営業した銭湯のうち、自宅の台所と、男湯の中庭が隣合っている銭湯がありました。
お客さんが庭の縁側で涼んでいると、どうやら自宅の台所の物音が聞こえてくる時があるらしいのです。
例えば、大きな物音や、子供達のケンカ声などが聞こえてくると。
そんな音を聞いたお客さんの中には、帰り際にカウンターにいる主人に、「子供さん元気がいいねー!」と報告してくれる人もいます。お店にいても、住まいの方の情報をキャッチすることが出来て、良かったかな?
私がカウンターにいる時は、どちらかというと、お店に来たお客さんが、「今旦那さんが自販機でタバコ買ってたよ」とか、「郵便局の辺りを自転車で通り過ぎたよ」とか、主人の情報を教えてくれます。
「他の人より顔を知られているから、うっかり散歩も出来ない」なんて言っています。
ところで、お店の縁側で涼んでいるお客さん。
夕方になって、私が食事の準備を始めると、台所から聞こえる音と匂いで、本日のメニューを予想するようです。
ある日、「今日は野菜炒めだよ」と言って帰って行ったので、主人はそのつもりで住まいの台所へ行くと、なんと夕飯はカレーでした。
「あれ?今日は野菜炒めだと聞いてたぞ?!」って。