大家さんの入浴

私たちが初めて引っ越して借りたお風呂屋は、大家さんの住む家が、同じ敷地の中にありました。

お風呂屋が道路に面して建っていて、その奥に大家さんのお家が建っていました。そして、お風呂屋を借りる話があった時に、「大家さんが『裏』からお風呂に入りに来ます」と聞いていました。

当時の銭湯は、持ち主が店を貸して借り手が営業する店も、地域によっては結構あったものです。そして、その大家さんが、同一敷地内にお家を持っていることもあるし、また、銭湯の裏の二階にお住まいだったりしました。そして、ご近所にお家がある場合もありました。

大家さんが銭湯に入浴に毎日来るというのは、慣習として珍しくないようでした。でも私はそれがよくある話だとは知りませんでした。

奥様は私たちが引っ越しして、2、3日はお店側から入浴していきました。でもその後は、私たちの住まい側の裏手(=『裏』)の入り口から来て、入浴するようになりました。ご主人は初めから裏手の入り口から入浴されていました。

裏は、あくまで作業場なので、更衣室や脱衣場のようなものはありません。それで、慣れるまで少し時間がかかりました。その後、家族のように親しくなるのではありますが。

関東近郊の銭湯をやること約半世紀。全部で4軒のお店を渡り歩いて来ましたが、最後は20年間腰を据えて、町の変わりゆくのを番台から眺めておりました。 ブログは主に女将が担当しております。子供は3人。